社会保障の仕組みとは?

医療保険は、社会保障制度の中の1つの仕組みです。社会保障とは、ざっくりと言えば、世の中にある「不安」を取り除いて安全で平安な社会を作るための制度で、20世紀に入って大きく発展してきました。人々の暮らしを、社会全体でサポートしようとするものですが、「個人の生活は個人が責任を持てばいいじゃないか」と考える人々にとっては、まったく邪魔な仕組みでしょう。

たとえば、仕事を失って働けなくなった人が多くなると、犯罪が増えます。食べるために、泥棒をしたり強盗をしたりする人が現れるからです。パンを盗むために人を殺すなどというケースも起こり得るでしょう。空腹の憂さ晴らしに強姦する人もいるかも知れません。生きる望みを失って電車に飛び込み、交通機関を混乱させる人もいるでしょう。失業者もその家族も悲惨ですが、失業者が増えると犯罪が増加し、バリバリ働いている人たちにとってのリスクも高まるのです。失業しても食べられる、生きていかれるようにすることで、社会全体が安定し安心して暮らせます。

病気やケガで大きな費用が必要となったり、蓄えがなくて老後に暮らせなくなったりするのを予防することにも、同様の意義があります。助け合いの仕組みは、裕福な人々にとってもメリットがあるわけです。人生において遭遇する可能性のあるいくつかのリスクについて、国が主体となってサポートするのが社会保障です。


わが国の制度は世界一!?

かつてイギリスでは、「ゆりかごから墓場まで」というキャッチフレーズで社会保障の充実がうたわれました。生涯を安心して暮らしていける社会システムの構築が目指されたわけですが、当時のイギリスは世界で最も裕福だったために、そうした政策を打ち出すことができたのです。ただ、国のサポートが手厚いと、「楽(らく)しよう」という人も現れます。

社会保障のジレンマは、充実させ過ぎると人々の労働意欲を減退させたり、無駄遣いをする人を増やしたりする恐れがあることです。結果として、社会保障にかかるコストが大きくなり過ぎて、賄いきれなくなってしまいます。実際、イギリスでは社会保障の充実が経済の衰退を招いてしまいました。給付と支出のバランスがとても重要となるのです。

病気になったときにも、失業したときにも、リタイアした老後にも、一定の生活補償を受けられる仕組みを整え、かつ、病気にならないように、健康で暮らせるように環境を整えるのが社会保障。それを安定的に運営するためには、税金と個人や企業からの拠出を組み合わせて財源とし運営することが重要です。国によっては、すべて税金によって賄っているところもありますが、わが国の場合、「保険料」として個人や事業主から徴収した資金と税金とをミックスしています。さまざまな問題はあるものの、世界で最も充実した内容を誇るクオリティの高いシステムです。


社会保障は所得再分配!?

わが国の社会保障には大きくわけて、2つの分野があります。個人や事業主からの「保険料」をひとつの財源とする「社会保険」と、税金で賄う「社会扶助」です。前者には、健康保険、雇用保険、公的年金(厚生年金や国民年金)、介護保険などがあり、後者には、生活保護(公的扶助)や児童手当(社会手当)などがあります。公衆衛生も社会保障の一部です。

社会保障の根本には、「所得再分配」という考え方があります。簡単に言えば、お金のある人から集めて困っている人に配る、という仕組みです。世の中というのは、頑張った人、才能のある人、運のいい人が成功するものですが、放っておけば、運の悪い人、才能のない人は貧困にあえぐことになってしまいます。人間社会に元から存在する「ゆがみ」を全体でカバーするのが社会保障です。社会保険も社会扶助も、納税額や支払保険料に関係なく、誰でも一定レベルのサービスを受けられるようになっています。いわゆる「市場原理」に任せておくとうまくいかないエリアを国がリードしてカバーしているわけです。

わが国の社会保障は世界最高レベルです。健康保険制度は世界保健機構(WHO)から、「世界最高」という評価をえました。公的年金の保有資産は世界最高額であり、わが国の国際信用度の裏付けともなっています。 国民としては、誇りにしたいシステムです。